ホーム > 戸建や工場・倉庫など複雑な形状の屋根の面積はどうやって求める?係数を使って簡単に算出する方法
戸建や工場・倉庫など複雑な形状の屋根の面積はどうやって求める?係数を使って簡単に算出する方法
屋根塗装をするときに予算が気になると、身近な人の屋根塗装の金額を参考にすることもあるでしょう。ただ、「同じ建坪で屋根の面積も同じくらい」だと思っても、実際には見積額がだいぶ異なるケースもよくあります。金額が異なる理由に「屋根材の違い」があります。屋根塗装の面積は、「屋根材の種類」や「屋根の形状」によってかなり変わります。
たとえば、よく見かける化粧スレートとセメント瓦の波形洋瓦。化粧スレートはほとんど平らですが、セメント瓦の波形洋瓦はかなり曲がりくねっています。そのため、セメント瓦の塗装面積は1.16倍になるのです。
屋根塗装は、下塗り・中塗り・上塗りという工程で塗料を塗っていくので、1.16倍もの差があれば、それだけ費用もかかるということになります。屋根の面積を求めると費用のイメージが掴みやすくなりますが、単に建物の規模だけで考えず、屋根の形状も考えることをおすすめします。
塗装面積は屋根材の形状で変わる
新築時に葺いた屋根材は、その後数十年も使っていくことになるでしょう。ただ、長い期間使っているうちに、新品のような防水性はなくなるため、メンテナンスが必要です。粘土瓦以外は、定期的な塗り替えをしなければなりません。
メンテナンスについては自己管理ですから、お住まいになっているが主体的に進めていくことになります。しかし、屋根材について知らないことが多いと、不安や疑問から塗装に前向きになれずに「塗装が必要なのに放置して、さらに傷む」ということもあるでしょう。屋根塗装をするうえで、屋根材の種類や塗装面積について、ある程度は自分で知っておくことで適切な維持管理にもつながります。
「平らな屋根材」はほとんどないため、正確に屋根面積を把握しているケースはほとんどないかと思います。
屋根の面積の把握に便利な「係数」
ほとんどの屋根材には曲線や凹凸がり、表面積を具体的に知るのは難しいですよね。そこで便利なのが屋根材に存在する曲線の部分や凹凸を含めた表面積を数値化した「係数」です。
よく見かける和瓦(J形)を例にとって見てみましょう。係数は1.08です。「軒の長さ」×「斜面の長さ」×「1.08(係数)」という計算式に当てはめることで、概算で求めるよりも実際に近い屋根の面積を求めることができます。
2階建ての住宅で「1階部分」と「2階部分」は違う種類の屋根材を使うことはほぼないかと思いますが、もし違う場合でも屋根材ごとの係数が分かれば計算することは可能です。
また、「詳細でなくても、大まかな屋根面積が知りたい」という場合、建物の床面積から求める方法もあります。どちらの方法でも、屋根の面積をあらかじめ自分で確認しておくことはできるでしょう。
戸建て住宅では、瓦やスレート、金属など屋根材の種類はたくさんあります。さらに、形状もいろいろなものが存在し、戸建て住宅の屋根のバリエーションはかなり多いです。
「うちは粘土瓦で塗装の必要がない」とお考えの方もいるでしょう。でも、引っ越しや建て替えなどで、次は塗装メンテナンスが必要な屋根材の家に住む可能性もあるのではないでしょうか。いろいろな屋根材の係数を知っていれば、役立つシーンもあるかと思います。
セメント瓦~形状が「和瓦(J形)」の場合⇒係数は1.08
セメント瓦でも粘土瓦でも、形状が「和瓦」なら係数も同じで1.08です。実際に塗装する面積は、軒の長さと斜面の長さで算出した屋根の面積に係数1.08を掛けて求めます。
セメント瓦~形状が「波型(M型)」⇒係数は1.16
波型(M型)と呼ばれる形状は、セメント瓦やモニエル瓦でよく見かけます。曲線が多い形状のため、実際に塗装する屋根の表面積も増え、1.16倍をかけて算出します。
心木の有無で係数が変わる「金属屋根(瓦棒葺き)」
金属屋根の場合、木材に屋根材を固定する「心木有りの瓦棒」と、下地に直接固定する「心木無しの瓦棒」があります。心木があるか・ないかで、係数は変わります。
心木有り⇒係数は1.24
一般的な瓦棒屋根の心木の太さは、「横45mm・高さ40mm」ほどです。420mm間隔で並び、心木の入った部分の外観の大きさは横・高さともに50mmとなります。
つまり、420mmごとに、「心木の左の側面・心木の上面・心木の右の側面」というように、左右の高さ50mmずつを塗る必要があるため、4分の1近く面積が大きくなるのです。
係数は1.24をかけると、心木の部分の面積が4分の1近く面積が大きくなるのは驚きですね。
心木無し⇒係数は1.14
心木無しの場合、鋼板の幅は瓦棒の製品によって異なるため、ここでは、心木有りとほぼ同じ働き幅の418mmのもので係数を算出します。心木の無い瓦棒は、高さ30mmの通し吊り子で鋼板が繋ぎ合わされています。
ただ、通し吊り子には被せる凹凸状のキャップがるため、実際には上記の計算式で求めた面積よりもほんの少し増えます。
屋根面積は、働き幅(鋼板の幅)が広いほど係数は小さく、働き幅が狭いほど係数は大きくなります。さきほどの計算方法のとおり、「鋼板の働き幅」に「通し吊り子の高さ両面分」を足し、鋼板の働き幅で割ります。
金属屋根(立平葺き)の場合⇒係数は1.15
立平葺きの場合も、心木無しの瓦棒と同じく製品によって鋼板の幅が違います。ここでは心木有りの瓦棒420mm、そして心木無しの瓦棒418mmに近い「390mm」のもので係数を算出します。
立平葺きは、鋼板の端の重ね合わせている部分が斜辺となっています。そのため、塗装面積は実際には計算式で求めるよりもやや大きくなります。
係数を使わない「アスファルトシングル」「化粧スレート」「成型金属屋根」は軒の長さと斜面の長さで算出
アスファルトシングルや化粧スレート、成型金属屋根は、凹凸や重なった部分で段差があります。細かなところで言うと、平らな面を塗るだけでなく凸凹部分にも塗料の分量が必要となるでしょう。
ただ、数値としては微妙なため、これらの屋根材の場合、「軒の長さ」と「斜面の長さ」を単純に掛けた表面積を塗装面積としています。
戸建て住宅と比べると、工場や倉庫の屋根や外壁は、それほどバリエーションはありません。種類としては、金属の折板屋根などが多く、形状も大波スレートや小波スレートが一般的です。ここでは例として、折板屋根や大波スレート、小波スレート、金属波板の係数を見ていきましょう。
折板屋根~メインは「88タイプ(高さ88mm)」と「150タイプ(高さ150mm)」
用途に合わせてさまざまなものが存在する折板屋根ですが、主に流通しているのは高さ88mmの「88タイプ」、そして高さ150mmの「150タイプ」の2種類です。
折板屋根は、高さによって係数が変わります。しかし本当は、高さ88mmの「88タイプ」で係数が1.44なのに、1.69で計算する業者もいるので注意が必要です。
「係数1.44」なのに「係数1.69」で計算すれば、塗る面積が21%以上も増え、お客様側は損をしてしまうことになります。
折板屋根は「高さで係数が違うこと」を頭に入れておけば、お見積りのときに疑問を指摘できるかもしれません。また、上記以外の高さの折板屋根もあります。メーカーのホームページで屋根材の詳細な断面図と寸法を確認し、計算でその係数となる数値を求めることもできます。
大波スレートの場合⇒係数1.14 小波スレートの場合⇒係数1.15
大波スレートは、工場や倉庫などの屋根のほか、外壁にもよく使われます。大波スレートの係数は1.14です。また、小波スレートの係数は1.15です。
小波スレートの「波」は小さいですが、波の数が多いです。「大波」と「小波」と聞くと、大波の面積が大きくなるような印象を受けますが、実は小波でもそれなりに屋根は大きめです。
金属波板(大波)の場合⇒係数1.15 金属波板(小波)の場合⇒係数1.20
金属波板も、「大波」と「小波」の面積の違いが見た目で分かりにくいですよね。係数は、大波が1.15 小波が1.20です。
スレートでも金属でも、「波型」であれば、小さな波の方が面積は大きくなる傾向と言えるでしょう。表面の波の凹凸が小ぶりでも、その分、波の数が増えるためです。
どんな業者でも塗料の注文は少し多めにする
塗装業者の多くは、必要最低限のギリギリではなく、予備分としてちょっと多めに塗料を注文します。塗装では、ローラーや刷毛を使っていくうちに垂れることもありますし、塗装を綺麗な線で仕上げるために養生に塗る感じで進めることもあるからです。
また、塗料の使用量は「この面積だからこのくらい」と必ずしも定量ではではありません。セメント瓦やスレートの場合、傷みがひどければ下塗りのときに塗料がかなり染み込み、通常よりも塗料の分量を必要とします。
同じ建物でも、日当たりのいいところは特に劣化しているのに対し、それ以外のところはそんなに傷んでいない…ということもあるでしょう。予想よりも傷んでいて塗料が染み込めば、作業中に塗料が足りなくなるかもしれません。ほとんどの塗装業者は、作業を中断しないためにある程度余裕を持たせた発注をしています。
屋根の面積は合っている?!疑問があったら遠慮なく質問を
塗装をするときに、複数の塗装業者から相見積もりをするという方もいるでしょう。しかし、それぞれの業者によって、用紙も書き方もばらばらの見積書を見ると分からない点も多いかもしれません。
塗料面積については、「軒の長さと斜面の長さだけで大まかに記載している」「係数をかけて実際の塗装面積に近い数値を出している」「係数を注釈に記載している」など、さまざまなケースがあるかと思います。
相見積りを比較して屋根の面積が違っていた場合、まずは塗装業者に質問してみることが大事です。「セメント瓦の波型のため、塗る部分が見た目よりも○%程度増えますよ」など、ほとんどの業者は説明してくれるでしょう。
また、見積書を見るときには、面積はもちろん、総額の金額も比べてくださいね。「A社とB社を比べると面積が違う…。でも総額はほとんど同じ」というケースなら、どちらの見積書も不信な点はないと言えるでしょう。
相見積もりを見比べると、業者によって「係数の数値」が微妙に異なることもあるでしょう。今回の記事では、少数点3桁目を切り捨てて表記しましたが 、切り上げした数値を記載する塗装業者もいます。
たとえば、折板屋根や波形スレート、金属波板には、屋根材を固定するフックやボルトが大量に付けられています。これも、塗装の対象ですから、フックやボルトだけで1000本以上あるような工場などの広い屋根は、その分だけの塗料でも量が多いでしょう。フックやボルトは係数には考慮されていません。そのため、係数を切り上げている業者はぼったくりに思えるかもしれませんが、屋根の面積以外でも塗る箇所があるという背景も考えられます。
街の屋根やさんは、相見積りも大歓迎です。まずはお気軽に無料点検をご依頼ください。
複雑な形状の屋根の面積を簡単に算出する方法のまとめ
●複雑な形状をした屋根の面積は係数を使って求めると便利です
●瓦の場合、実際の塗装面積は「和瓦(J形)が1.08倍」「洋瓦の波型(M形)が1.16倍」です
●瓦棒葺きの金属屋根材の塗装面積は1.24倍となり、見かけよりも面積が大きくなります
●同じ金属屋根材でも立平葺きは1.15倍ですが、鋼板の重なった部分があるため、実際はやや大きめです
●スレート屋根やアスファルトシングルなら、係数は使いません
●折板屋根では、高さによって係数も異なります
●立平葺きや折板屋根で、高さ、幅が違ったとしても塗装面積は計算で求めるができます
●波形スレートや金属波板など波の凸凹がある屋根材の場合、波の高さと幅が小さくなるほどに実際の塗装面積は大きくなる傾向です
●屋根の塗装面積に疑問や不安があれば、遠慮せずに塗装業者に質問することが大事です