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屋根を支える野地板は超重要!張り替えと増し張りでより強く
野地板は、表面の屋根材、その下の防水紙の土台となる重要な部分です。ただ、屋根材の下という隠れた場所にあるため、ふだんは目に触れる機会がありません。傷んでいても気づかないため、メンテナンスのタイミングを逃がしてしまうこともあるでしょう。
しかし、野地板は「屋根材が固定される」重要な部分です。気づかないまま劣化すると、屋根の強度も落ちてしまいます。メンテナンスのチャンスがあったら、必ずお手入れしましょう。
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野地板は屋根リフォームで知っておいてほしい超重要部分
屋根の葺き替えなど、大規模なリフォームでは「どんな素材にするか」「どんな色にするか」というように、屋根材自体を気にするお客様が多いです。屋根材をどう選ぶかで住まいの外観のイメージも変わるため、じっくり考えたいのは当然のことでしょう。また、屋根葺き替えのタイミングで雨漏りのリスクを考慮して、防水紙を新しいものに検するケースもあります。
しかし、屋根材と防水紙の下にある野地板については、大切な部分であるにもかかわらず、屋根葺き替えの検討段階では興味を持たれない方はたくさんいます。
おそらく、「野地板」は目視することができないため、どこの部分か全く見当がつかないから…というのが理由のひとつでしょう。
しかし、野地板は屋根にとってとても大切な部分ですから、役割やメンテナンスについて知っておくことは損ではありません。
防水紙を敷いてから屋根材を固定する部分を野地板と言います。野地板の語源は「野(目に見えない部分)の地(下地)の板」です。屋根には必ず野地板が存在しています。
野地板は屋根の一部!防水紙と屋根材と野地板がセットになって屋根を構成している
「文章だと分かりづらい…」という方は、まずは図を見ていただくと分かりやすいのではないでしょうか。屋根は、屋根の表面にある「屋根材」、その下に雨水を浸透させないための「防水紙」、そして屋根材を固定する「野地板」とワンセットで構成されています。
これらは必ず「セット」でなければならず、どれかひとつでも欠けると屋根が正常に機能しません。屋根材や防水紙がなければ雨水は浸入しますし、野地板がなければ屋根材や防水紙は固定できないのです。
「垂木」と「防水紙・屋根材」の間を取り持つ超重要部分
野地板は独立しているわけではなく「垂木」に固定され、屋根材と防水紙は「野地板」に固定されています。つまり、野地板は「垂木」と「防水紙・屋根材」の間に入り、それらを結びつけるような役割があります。屋根を構成しているパーツは、上から順番に「屋根材⇒防水紙⇒野地板⇒垂木」となりますが、どれか1つでも欠けると屋根は成り立ちません。その中でも中間的に存在していて、すべてを繋ぐ野地板は特に大事です。
実は、屋根材自体はほぼ水が染み込まないので、そこから防水紙にも染みることはありません。しかし、屋根材以外から雨漏りすることは多く、そんなときにダメージを受けやすいのが木材の「野地板」と言えるでしょう。野地板に浸透した水分は、その下にある垂木、天井などの木材へと水分を伝わせてしまいます。屋根の内部にあり乾燥しにくいことから、カビの発生や腐食の原因になります。
野地板は屋根を支えている部分ですから、雨水の浸透によりボロボロと傷むのは避けなければなりません。ダメージが進んだ野地板は、耐震性や耐風性もなくなり、住まい自体に不安を抱えてしまいます。
一般的に、住まいを支える重要部分として「基礎」や「柱」をイメージしがちですが、屋根を強固に保つための野地板も注目したい部分です。適切なタイミングでメンテナンスできれば、しっかりとした野地板を保つことができます。屋根はもちろん、家もしっかりしてくるのです。
年代や地域によって異なる野地板の種類
野地板はなかなか見る機会がないため、どんなものかイメージできない人も多いでしょう。板と言うワードから「1枚の木の板」に思えるかもしれませんが、家が建築された年代や、地域性によってさまざまな種類があります。それでは、次に代表的な野地板を見ていきましょう。
構造用合板(構造用パネル)
一般的な戸建住宅で多く使われているのが「構造用合板」です。住まいのなかでも耐震性や耐風性を重視する部分に使われる目的の合板で、サイズや厚み、等級もさまざまなものがあります。
野地板としてよく採用されるのは、シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒドの放散量が最も少ないF☆☆☆☆(フォースター)で、12mmの厚さの構造用合板です。構造用合板は、建築構造用の強度証明もできます。
構造用合板と間違われやすいものに「コンパネ」という資材があります。構造用合板と厚みや大きさはほとんど同じですが、使用用途が異なります。構造用合板が「住まいの強度を保つために使う合板」であるのに対し、コンクリートパネルの略であるコンパネは「コンクリート型枠として使用される合板」です。構造用合板は、コンパネよりも強度が高く、JAS規格の証明スタンプが押されています。
バラ板(小幅板(こはばいた)・荒野地(あらのじ))
築40年以上の住宅でよく使われていたのが「バラ板」と呼ばれるものです。約90~120mmの幅のバラバラの板を隙間があくように設置されていました。この隙間には、通気と乾燥の役割があります。
防水シートなどが進化した昨今では、野地板の腐食を心配する必要が無くなったため、バラ板が使用されることはほとんど無くなりました。
街の屋根やさんでは、バラ板の野地板の場合、屋根の構造の強度を高めるために上から構造用合板を張る「増し張り」をお薦めするケースもあります。
耐火野地板
準防火地域や防火地域、屋根不燃区域などの場合、「耐火野地板」と呼ばれる野地板の使用が義務付けられています。
耐火性が高い野地板で、30分の火災に耐えることができます。木片とセメントを混ぜ合わせて圧縮成型したもの、燃えないロックウールなどと組み合わせたものなどの種類があります。耐火性の野地板は、火災が起きたときに高い安全性を発揮しますが、その分価格は高価です。
※画像はニチハ株式会社の耐火野地板まげのじくん(国土交通大臣認定30分耐火構造)
野地板の主なメンテナンス方法は、屋根の構造を強くする「増し張り」、腐食などによりダメージを受けた部分を新しくする「張り替え」です。
しかし、野地板のメンテナンスはいつでもできるわけではありません。メンテナンスのために点検をしようにも、通常は屋根材に隠れていて目視でのチェックも不可能です。そのため、屋根葺き替えや屋根葺き直しなど、屋根材と防水紙を剥がすタイミングでしかできないメンテナンスと言えるでしょう。屋根葺き替えや葺き直しの際には、野地板のお手入れのチャンスを逃さないようにしてくださいね。
増し張り(重ね張り)
増し張りは、既存の野地板を剥がさずに上から重ねて張っていく方法です。バラ板(小幅板・荒野地)の野地板の場合に行われることが多いです。もともとの野地板を撤去しない分、屋根の重量は重くなります。しかし、屋根構造が格段に強くなる為、強風や地震にも強くなり、安心感が増します。
また、増し張りによって屋根材をしっかり固定できるようになり、屋根が剥がれにくくなるメリットも期待できるでしょう。
張り替え(部分交換)
野地板に水分が含まれ、ひどい腐食が見られるときにはそのままでは土台が極端に弱くなります。さらに腐食が拡がれば、屋根をしっかりと保つことが出来なくなる為、既存の劣化した野地板は除去し、新しいものに交換します。その際、野地板の下にある垂木にも腐食が拡がっている場合は、そちらも交換することになります。
このように、屋根を支えるうえで野地板は大切な部分になります。しかし、メンテナンスをしたくても「どうしていいか分からない」という方も多くいらっしゃると思います。
そんなときには、ぜひ街の屋根やさんの無料点検をご利用ください。「小屋裏の点検もして欲しい」とご要望をお伝えいただければ、可能な限り、小屋裏から野地板の状態も確認いたします。
野地板の耐用年数はどのくらい?屋根材別のメンテナンスの目安について
野地板の耐用年数はどのくらいでしょうか?一般的に、構造用合板なら約30年、通気性が高いバラ板なら約40年とも言われています。
化粧スレートやセメント瓦の場合、耐用年数は20~30年と言われています。葺き替えのタイミングで野地板のメンテナンスをするのが理想的です。
粘土瓦の場合、耐用年数が長く50年~100年とも言われています。しかし、屋根材の寿命に合わせたメンテナンスを待っていると野地板の寿命は尽きてしまいます。
そのため、漆喰の寿命に合わせた野地板のメンテナンスが理想です。棟瓦を一時的に撤去して並べ直す「棟取り直し」をする際に、屋根葺き直しもすることで野地板のメンテナンスができます。ただ、瓦屋根の漆喰の耐用年数は15~20年です。1回目のメンテナンス時期に合わせると少し早くなってしまいます。そのため、漆喰の2回目のメンテナンス時期を少し前倒して、「屋根葺き直し」と「野地板のメンテナンス」をするのが理想的と言えるでしょう。
雨漏りすると野地板の耐用年数は極端に短くなる
雨漏りにより水分が浸入すると、雨漏りが起こっている箇所だけでなく、周辺にまで傷みがおよびます。建物の劣化を早めてしまうため、本来の寿命よりも短くなってしまうのです。
屋根から起こった雨漏りは野地板にまで雨水が染み込んでいるケースが多いです。雨漏りが起こったら、まずは野地板の状況を確認することが大切です。
野地板の傷み具合は屋根の上を歩行すると分かる!?
野地板が傷んでいると、柔らかい感触になります。歩いたときに「フカフカする」という表現がぴったりです。実際にその上を歩くと沈み込むような感覚になります。
点検をしていて、フカフカした感触があれば安全確保のために早急に屋根から下りなければいけません。歩くと野地板の傷み具合が分かると言っても、自ら屋根の上を歩くのは危険度が高いため、絶対やめてくださいね。
野地板のメンテナンス事例
雨漏りにより腐食した野地板の部分的な張り替え
使用屋根材 ガルバリウム波板(小波)
先祖代々、農業を営んでいらっしゃるという施主様の建物です。築年数が相当経過しており、施主様ご自身も「いつから建っているか分からない」とのお話でした。
こちらの建物は施主様が子供時代に住んでいたそうですが、新しい住まいを同じ敷地内に建ててからは納屋として使用されていたようです。現在は農業もそれほど手広くやってないため、納屋を使うことも減って放置ぎみとなっていたとのこと。ただ、雨漏りがかなり酷くなり、収納している多くのものへの影響を考え、メンテナンスを決心されたそうです。
点検時の様子
農業を営まれている人は、身の回りのことをいろいろとご自分でやれる器用な方が多いですよね。水田の水路の補修などだけでなく、竹細工や柵作り、お住まいの補修など何でもこなせます。
実は、こちらの建物は、基礎や壁、屋根などを大工に施工してもらった後は、施主様のご両親がご自身で何度も補修をされていたということです。
「納屋」という目的で長い期間使っていた建物というだけあって、道具などを傷めず収納するために「雨風だけでも凌げればいい」という造りのようです。とは言え、二重のトタンに屋根カバーをしたりなど、オリジナリティあふれる修繕が施されています。
ただ、施主様の代になったとき、納屋の使用頻度も少なくなり、このように植物にも侵食されてしまったようです。これは、観葉植物のアイビーでしょうか。聞くところによると、もともとは植栽でお育てになられていたようです。
野地板を張り替えての屋根葺き替え
屋根材が何重にも重ねられている状態ですが、隙間がたくさんあり錆も目立ちます。雨水が処理できていない状態ですから、いったん全部撤去しました。
屋根材を剥いだところ、野地板や垂木などの木材部分にも雨水が浸透し、腐食していました。腐食したままでは建物に影響が出ますから、野地板や垂木を新しいものに交換します。建物の造りは簡素ですが、傷みがひどくなっていたこともあり大規模な屋根リフォームとなりました。
以前の野地板はバラ板でしたが、今回は構造用合板を新設しました。これまでのバラ板は「線」という感じでしたが、構造用合板で「面」としたことで地震や強風にも強い構造になりました。防水紙も設置し、雨漏りを防ぐ対策ができました。
ガルバリウムの波板は、野地板への釘止めではなく、新たに設けた「桟(横方向の棒)」にしっかり固定します。桟に固定すれば防水紙に穴を開ける必要がない為、その分寿命も長くなるでしょう。
野地板を新設しての屋根の部分葺き替え、竣工
屋根材だけでなく、野地板や垂木の交換、防水シートの新設…というように、雨漏りの心配がない納屋の誕生です。濡れてはいけない大事な物も、これからは納屋へ収納できるでしょう。
屋根葺き替え時に増し張り
使用屋根材 横暖ルーフ
築年数がかなり経ち、すでに雨漏りにお悩みという施主様のお住まいです。「今後、長く住み続けたい」というご予定があり屋根葺き替えを決心されました。これまではコンクリート瓦でしたが、今後は耐震性を考えて軽い金属屋根をご選択されました。
点検時の様子
極端に酷い…というわけではありませんが、雨漏り跡からカビも発生していました。いつも雨漏りするというよりも、風向きなどによって雨漏りをする時、しない時があるようです。この状態なら、小屋裏から大がかりに改修まではしなくても良さそうです。
見た目的にも汚れが目立ってきたセメント瓦の屋根です。でも、何よりも問題に感じられたのが「漆喰がなくなりかけている」ということ。瓦を支える役割がある漆喰がないことで大きい地震が起これば瓦が落下する危険があります。
また、外壁に瓦を直に付けた部分も見られました。谷のように付けられているので、雨が降れば水が確実に溜まります…。しかも、隙間だらけで落ち葉がびっしりと詰まっています。とても問題のある施工で、これらはやり直さなければなりません。
セメント瓦から金属屋根への葺き替え
葺き替えですから、瓦を全部撤去します。瓦を取り除き、見えてきた防水紙には穴が開いていました。これでは雨漏りもするでしょう。
次に防水紙を撤去したら、小幅板の野地板が見えました。思ったよりも綺麗で、ほとんど湿っていませんでした。
既存の野地板の上から、構造用合板で増し張りしてきます。サイズを合わせて釘でしっかりと固定していきました。増し張りにより、強い構造の屋根になりました。
そして、防水紙を全体に敷いていきます。これまで屋根材と壁の接合部にできていた問題の隙間も、今後は雨水が入らないように処理を施します。
新しく設置する屋根材は「横暖ルーフS」です。近頃の成型金属屋根材は施工性が高く、葺くこと自体にはそれほど時間がかかりません。ただ、屋根材と壁が接合する部分となる取り合いはしっかり処理することが必要で、時間はかかります。現在は、外壁との取り合いの処理に水切りは標準施工ですから、より雨漏りしにくくなるでしょう。
野地板の増し張りをしての屋根葺き替え、竣工
最後に、棟に板金を付けて、今回の屋根葺き替えは完了しました。雨水の浸入をおさえるため、外壁と下屋の取り合いには水切り金具、先のことを考えて雪止めも設置しています。今後は、雨漏りに悩まず安心・快適にお過ごしいただけるかと思います。
野地板についてのまとめ
●屋根材の下にある防水紙、そして防水紙の下にある板を野地板と言います
●野地板は防水紙や屋根材を固定するための重要な部分です
●現在の野地板は「構造用合板」を使うことが多いですが築年数が古ければ「バラ板」が使われていることもあります
●地域によっては、燃えにくい「耐火野地板」を使っているケースもあります
●野地板のメンテナンス方法は「増し張り」と「張り替え」です
●耐用年数は30年ほどの野地板ですが雨漏りで吸水すると寿命は極端に短くなります