ホーム工場・倉庫の屋根や外壁に使用される大波スレートと小波スレートの最適なメンテナンス方法
工場・倉庫の屋根や外壁に使用される大波スレートと小波スレートの最適なメンテナンス方法
耐用年数がとても長く、工場や倉庫によく使われている建築資材が大波スレートなどの波板スレートです。とても丈夫なものですが、さすがに長く使われてきただけあって、メンテナンスが必要なものも見受けられます。工場や倉庫のオーナー様や定修・改修の担当者様でそのメンテナンスにお悩みになっている方も多いのではないでしょうか。2004年以前に製造された波板スレートはアスベストが含まれており、それがさらに問題を難しくしています。アスベスト入り波板スレートの最適なメンテナンスは何なのか、それを探っていきましょう。
【動画で確認「大波スレートと小波スレートの最適なメンテナンス方法」】
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強靭さと頑健さで社会に貢献してきた波板スレートですが、
アスベスト含有のため、メンテナンスが難しくなっています
「築年数も長く、建物が古くなってきたので何とかしたい…」、工場や倉庫を経営なさっている代表者の方やメンテナンスの担当者からよく寄せられるご相談です。お話を詳しくお聞きしますと、築50年以上ということも珍しくなく、その使用年数の長さには驚かされます。
このように長く社会に貢献してきた工場や倉庫、そしてその外周りを支えてきた大波スレートや小波スレートですが、メンテナンスをするのが難しくなってきています。2004年以前に生産されたもののほとんどがアスベストを含んでいるからです。
メンテナンス難しいからといって後回しにしますと、コスト増を招くことがあります。アスベストを含んでいる廃材の処分費も上昇傾向にありますから、早めの決断が必要です。
波板スレートとは
波板スレートはセメントと繊維を混ぜ込んだものを文字通り、波の形に加圧成型して固めたものです。大幅なメンテナンスをすることなく、築50年以上の建物が存在することからも分かるようにとても優秀な建材と言えるでしょう。多くの工場や倉庫に使われてきた実績はその耐用年数だけではなく、法定不燃材、遮音性、価格、税制面での優遇など優れた特徴を多数、備えているからなのです。
1.耐久性に優れている
耐用年数は25年以上と言われており、こまめなメンテナンスが必要ないところが最大の強みです。ただし、波板スレート自体は強いものの、それを固定しているフックボルトなどは金属ですので錆びやすく、こちらは定期的に点検してあげないといけません。
2.耐火性に優れている
法定不燃材料であり、他の材料との組合せによるが各種防火・耐火構造として認定されています。
3.遮音性に優れた建材
厚さは6mm程度しかありませんが、工場や倉庫内の外部に漏れる音がとても少ないのです。内部に伝わる音も少なく、雨の日も静かなのは金属の建材と大きく違うところです。
4.比較的安価な建材
建材としてもお安い部類で、なおかつ上記の性能を備えているのでかなりお得と言えます。ひびが入ったり、穴が開いたりしているものも比較的気軽に交換によるメンテナンスが可能です。
5.改修・メンテナンスでの税金面
老朽化した波板スレートを同じ波板スレートで葺き替えたり、張り替えたりする場合は一括損金で処理できます。税制面で優遇されているとなれば、オーナー様や改修や補修の担当者もメンテナンスしやすいと思います。
1.土埃などが付きやすく、汚れやすい
波板スレートは表面がツルツルしていないためか、砂埃や土埃が付着しやすく汚れやすいというデメリットがあります。砂埃や土埃が付着しても劣化や腐食することがないので、そのままにされることが多く、見た目が悪くなっている建物も多くなっています。見た目はその地域に住んでいる方々のイメージを左右します。定期的にメンテナンスして美観を保つようにしてあげましょう。
2.アスベストが入っている(2004年以前のもの)
波板スレートに使われているアスベストはレベル3のもので、危険性が指摘されているものの中でも一番安全度が高いとされています。飛散の可能性も低いことから、防じんマスクをして湿式作業(飛散を抑えるために水で塗らして切削や解体をすること)が義務付けられています。
厳重な管理が必要な特別管理産業廃棄物としてではなく、産業廃棄物として最終処分場に持ち込まれます。
波板スレートの製造が2004年以前
アスベストを含有
波板スレートの製造が2004年以降
アスベストをほぼ含まない
2.アスベストの危険性を分類するレベル1~3とは
|
発じん性アスベスト飛散危険度 |
建材の種類 |
廃棄物の扱い |
レベル1 |
著しく高い |
吹付け材
・吹付け石綿
・石綿含有吹付けロックウール
・石綿含有吹付けバーミキュライト
など |
特別管理産業廃棄物 |
レベル2 |
高い |
保温材・耐火被覆材・断熱材
・石綿含有けい酸カルシウム保温材
・石綿保温材
・屋根用折板石綿断熱材
など |
レベル3 |
比較的低い |
その他石綿含有建材(成形板等)
・石綿含有スレート屋根材
・石綿含有せっこうボード
・石綿含有サイディング
・ビニル床タイル
など |
産業廃棄物 |
※国土交通省・目で見るアスベスト建材(第2版).pdfより引用
波板スレートと種類とその形状
波板スレートは1波の大きさが大きい大波スレートと小さい小波スレートがあり、さらに大波スレートには2種類あります。大波スレートと小波スレートは用途が違いますので、ちょっと注意が必要です。
大波スレート 屋根用・外壁用
1山(波の幅・ピッチ)が130mmで波の高さが38mmのもの。屋根材としても、外壁材としても使われます。
厚みが6.3mmのものと8mmのものがあり、8mmのものは高強度大波スレートと呼ばれ、曲げに対する強さが6.3mmのもの2倍以上になります。
小波スレート 外壁専用
1山(波の幅・ピッチ)が大波スレートのほぼ半分の63.5mm、波の高さもほぼ半分のの18mmです。
こちらは大波スレートとは違い、外壁専用の建材になります。古い建物の場合、屋根にも小波スレートが使用されているケースもあります。
その他の波板建材
同じ波板形状をした屋根材として金属波板があります。スレートや金属を波形状に加工する理由は水平方向に対する曲げの強さを確保するためです。
金属波板にも大波と小波があるのですが、その大きさはスレート波板と全く違います。
|
1山(波の幅・ピッチ) |
波の高さ |
大波(金属) |
76.2mm |
18mm |
小波(金属) |
31.5mm |
9mm |
半円型のアーチを交互に組み合わせたような形状の波板はスレートであっても、金属であっても、表面積は計算するのが難しいですよね。そこで、屋根塗装や外壁塗装をする場合は係数を使って算出します。スレート波板は大波であっても、小波であっても、平面を塗る時よりも塗料が16%程度多くなることが分かります。
波板スレートの種類 |
ピッチ |
係数 |
大波スレート |
130mmの場合 |
1.154 |
小波スレート |
63.5mmの場合 |
1.144 |
大波(金属) |
76.2mmの場合 |
1.15 |
小波(金属) |
31.5mmの場合 |
1.20 |
大波スレートも小波スレートも、まず問題になるのが固定しているフックボルトの錆
耐用年数が25年以上でほぼノーメンテナンスで50年以上も経過しているものもあるというスレート波板、こちらで最初に不具合を起こすのが固定しているフックボルトの錆です。これらが錆びてきて、隙間などができてしまい、雨漏りが発生するという病状は古い工場や倉庫でよく起こっている問題です。
シーリングやコーキングによってそれなりの対処はできますが、いたちごっこになってしまいがちなので傷みが見られるフックボルトはすべて交換してしまうことをお勧めします。新しいものへと交換したら、フックボルトの錆を防止するためにボルトキャップを被せてあげましょう。
また、フックボルトが錆びてきて隙間などができてしまうと、スレート波板が動くようになってしまい、強風などで飛散しやすくなります。早めの対処で被害拡大を防ぎましょう。
部分的な張替え・交換
工場や倉庫の出入り口などで多く見られるのが物品の運搬などの際にぶつけてしまい、穴が開いたり、欠けたり、割れたりしている光景です。工場や倉庫は鉄骨に波板スレートを取り付けただけという造りも多く、穴が開いたり、欠けたり、割れたりしても、その部分のスレートが腐食するわけでもなく、他の部分への悪影響も少ないため、放置されがちです。部分的に交換できますから、早めに直してあげてください。
また、飛来物などによって屋根の波板スレートが一部破損してしまうケースもあります。こういった場合、その部分だけを交換してアスベストが使われていない波板スレートに張り替えることも可能です。
ただし、気をつけなくてはいけないのは全体的に老朽化してきた波板スレートで傷んだ部分だけを交換すると、他の場所が悪くなる可能性もあることです。雨水の流れが変わって他の部分の負担が増えて、そこがダメになってしまうのです。このようないたちごっこを防ぐためには交換によって影響が大きくなる部分も同時に交換する必要があります。
街の屋根やさんでは無料点検でそういったことも詳しく調査いたします。私達にお任せください。
屋根カバー工法
全面的な張替えや屋根葺き替えで問題となるのがアスベストを含んでいるということです。アスベスト含有の屋根材を撤去・処分するため、どうしてもその処分費が高くなりがちです。
廃材をほとんど出さず、スレート波板の屋根の全面改修を行う場合は屋根カバー工法が最適です。これまでのスレート波板の屋根の上に金属屋根材を被せるので廃材がほとんど出ませんから、産業廃棄物の処分費がほとんどかかりません。また、屋根が二重になりますので断熱性も向上します。屋根カバーに使われる屋根材はガルバリウム鋼板が大半で最近のものは生産時に遮熱塗料が塗られているので、夏の暑さ対策にもなります。
スレート波板への屋根塗装・外壁塗装
スレート波板への塗装も可能ですが、さまざまな問題があります。築数十年となると屋根材もそれなりに老朽化しており、この先、何年持つか分からないということです。老朽化しているスレート波板は予想以上に脆く、簡単に割れてしまうこともあります。
また比較的、安全性が高いアスベストといっても、建物の規模などから社会的にも、環境的にも高圧洗浄を行うのは難しいでしょう。老朽化して脆くなっていると、高圧洗浄に耐えられない可能性もあります。高圧洗浄を行わずに塗装をする方法もありますが、まだまだ一般的ではありません。
2004年以降に生産されたスレート波板はアスベストを含んでいないため、高圧洗浄も、塗装も可能です。半円型のアーチを組み合わせたような形状のスレート波板の表面積は前述のように係数を使って算出します。
大波スレート屋根の雨漏りを止めるため、フックボルトの全交換
雨漏りが発生するたびに補修を繰り返していた倉庫です。雨漏りの原因は既に判明しており、フックボルトの老朽化による錆でした。補修方法も統一されておらず、シーリング材が充填されているところもあれば、ボルトキャップがはめ込まれているところもあり、ばらばらです。
フックボルトの交換自体はそれほど難しいことではありませんが、なにしろ大型倉庫のため、屋根の面積も大きく、数も甚大です。5人がかりで、2000本以上のフックボルトを交換しました。
屋根の大波スレートの部分的な張替え
工場の妻側(一番端の部分)の軒の大浪スレートが強風被害で落下してしまいました。工場内部から見るとそこから空が見えます。この下には電気設備などがあり、雨に濡れるといろいろと大変なので、早急に直さなければなりません。
一般的な戸建て住宅よりも高さがあるので、高所作業車を使用し、採寸します。他にも被害が出てないかも確認します。
繁忙期ということで工場は被災に関係なく稼働中です。事故が起こらないように綿密な計画の下、復旧作業を進めていきます。
工場が稼動を続けている中、復旧工事をいたしました。これで、この直下にある電気設備も安心です。外装の工事ではありますが、工場の内外はフォークリフトなどの車両が走っており、さまざまな段取りが必要なります。短期間で復旧できてほっとしました。
小波スレートへの屋根カバー工法
鉄骨ではなく、木造の倉庫の外装を小波スレートで覆っていてるという建物です。フックボルトの老朽化から雨漏りが発生していました。現在では小波スレートを屋根材として使うことは認められていないため、かなり古い建物のようです。
基本的に一般的な戸建て住宅の屋根カバー工法も工場や倉庫の屋根カバー工法も同じです。屋根の上の突起は屋根カバー工法をする上で妨げになりますので、取り除きます。こちらは折板屋根でカバーするので対とフレームを取り付けます。画像の青い山型が連続している部分が対とフレームです。この上に金属の折板屋根を取り付けます。
タイトフレームの上にガルバリウム鋼板の折板屋根材を取り付けていきます。雨水が入り込まないよう、パッキン付きのステンレスビスを使用しています。
小波スレート屋根への屋根カバー工法が完了しました。これで雨漏りに悩まされることもないと思います。余談ですが、1964年の東京オリンピックの会場となる大型の建物の屋根は折板屋根が積極的に採用され、それが民間にも伝播したそうです。それまでは大型の建物といえば波板スレートでしたが、以降は折板屋根の建物が増えたそうです。
波板スレートのメンテナンス方法のまとめ
●アスベスト入りの波板スレートはとても耐用年数が長い建材です
●部分補修だけで築50年という屋根も外壁も波板スレートの建物も存在します
●波板スレートは大波スレートと小波スレートが存在し、曲げに強い高強度大波スレートもあります
●波板スレートで最初に劣化が出てくるところがフックボルトです
●アスベスト含有の波板スレートへのメンテナンスとして張替えと屋根カバー工法があります
●古い波板スレートへの屋根塗装は老朽化やアスベスト含有の問題から難しいのですが、2004年以降のものはノンアスベストのため、塗装可能です