多くのお住まいに採用されている化粧スレート屋根材、その特徴や正しいメンテナンス方法を知っているという方も多くなったように見受けられます。スレートに限らず屋根材が劣化もしくは破損することで雨漏りが起きる可能性が非常に高くなりますが、雨漏りを起こす意外な部位として『ケラバ』が挙げられます。
普段の生活では使うこともないケラバという言葉、見積もり等にも記載されていることがありますが、どの部位かわからないという方もいらっしゃると思います。そこで今回はケラバがどこを指しどんな役割を担っているのか、またそのケラバで雨漏りが起きる原因を徹底解説したいと思います。雨漏りが起きる原因は異なりますが、瓦屋根もケラバの修理が必要となる機会がありますので、合わせてご紹介いたします。
ケラバの場所と役割とは?
日常生活ではまず耳にすることが無いケラバは住宅建築用語で、「切妻屋根の妻側(棟の両端部)の端部」を指しますが、これだけでは複雑な形状のお住まいが多くなった現代では想像するのが難しいと思います。
住宅には妻側と軒(平)側の面があります。軒(平)側には雨樋がついており妻側には雨樋がないと言えばその面がどちらかがわかると思います。
軒側も妻側も昔は、日当たりの調整や外壁の劣化防止、雨水の吹き込み防止のために外壁よりも外側に屋根を伸ばしていました。その外側に出した妻側の屋根部分が【ケラバ】、軒側は【軒先】と呼ばれます。ケラバは螻羽と書くようですが、螻と呼ばれる昆虫の羽に似た形状をしていることからケラバと名付けられた経緯があるようです。
現在は敷地が狭い都市部を中心に、軒やケラバがほとんどないお住まいが増えてきています。「軒ゼロ住宅」とも呼ばれていますが、軒の出(幅)がほとんどないというお住まいはケラバの出(幅)もほとんどありませんので意味合いとしては同じです。スタイリッシュなお住まいや敷地の有効活用の為に近年は軒先・ケラバが短くなってきていますが、お住まいの劣化を防ぐためには軒・ケラバの出を長く設けたほうがオススメです。
ケラバの雨仕舞には破風板とケラバ板金もしくはケラバ瓦が使用されます。どちらも雨水が入り込まないような構造で取り付けられていますが、あることがきっかけで雨漏りを起こしてしまいます。またその雨漏り被害には軒・ケラバの出がないお住まいの形状も関係がありますので、今からお住まいを建築される方、住宅購入を検討されている方は要チェックです。
施工不良以外が原因のケラバ部分で雨漏りが起こることが多いのは築10年以降です。スレート屋根等と瓦屋根の場合で原因が異なりますので、お使いいただいている屋根材に合わせてチェックしておきましょう。
原因
セメント系の化粧スレート屋根材ですが、端部は板金で保護されておりケラバもケラバ板金・ケラバ水切りと呼ばれる専用の板金が取り付けられています。ケラバ水切りは雨水が吹き込まないよう内部に取り付ける捨て水切りと一体になった板金を使用している為10年程度は問題有りません。
しかし経年につれ埃やごみは捨て水切り部分に溜まり積もっていきます。すると屋根材内部に入り込んだ雨水が排水されずオーバーフローを起こします。
本来捨て水切り部分を流れるはずの雨水が堆積した埃で流れなくなれば、必然的に屋根内部で下地合板を腐食させてしまいます。これがケラバ部で雨漏りを起こす原因です。
今回は多く採用されているスレート屋根材でご紹介しましたが、同様のケラバ水切りは金属屋根材やアスファルトシングルでも使用されていますので、同じ雨漏りリスクがあるという事をしっかり頭に入れておきましょう。
対策
雨漏りが起きているケラバは屋根材を剥がさない限り確認することはできません。ケラバで雨漏りが起きていたことに気付くのが屋根葺き替え工事時だったというお住まいが多いほど、気づかれにくく盲点になりやすい部分でもあります。そのため屋根施工後に何か対策を講じるのではなく、施工する前のチェックが非常に重要です。
屋根材メーカーのマニュアルではオーバーフロー対策に、防水紙の増し張りやシーリングの打設を行う旨が記載されています。しかしこれらが適切に施工されているかを確認しなければ雨漏りリスクが高いままですので、施工中の写真を撮影してもらいご自身で保管しておきましょう。
また現在ではケラバ部分に雨水が吹き込まないようにシール材がついているケラバ板金もありますので、施工前にケラバでの雨漏りリスクを下げる方法として要望するのも一つの手です。
雨水だけでなくゴミや埃、土が堆積することを防ぐ
屋根リフォームの選択肢で挙げられる屋根カバー工法の際には、既存防水紙までは剥がさない為ケラバからの雨漏りには気づきにくいですが、野地板が腐食するという事は屋根材の固定力も低下してしまうため、工事前に野地板に劣化を感じさせるようなたわみがないかを確認してもらうことも大事です。屋根カバー工法を行ってからでは下地は完全に確認できない為、必要であれば部分的な野地板張替を行ってから屋根カバー工法を行うようにしましょう。
1961年「コロニアル」が販売され始めてから現在まで、施工マニュアルの大きな変更等がありませんが、ケラバ部での雨漏りが問題視されたのはここ10年程度かと思います。恐らく「軒・ケラバゼロ」の住宅が増えてきたからだと思います。
軒やケラバがほとんどない住宅が増えケラバ部からの雨漏りも問題視されるように…
今までは軒もケラバの出も30㎝程はあった為、オーバーフローでの雨漏りも軒天部分への被害で留まりました。しかし軒やケラバの出が無くなった今、ケラバ等での雨漏りは屋内に直接影響を及ぼしてしまいます。今後はオーバーフローに対して有効な部材や施工方法も発表されるかと思いますが、現在はまだご自身で対策を講じていく必要があるかと思います。
また軒やケラバの出が十分にあり軒天部分で雨漏りがとどまっているというお住まいもそのままには出来ません。軒天の劣化は小動物侵入による被害、雨水吹き込みによる雨漏り、強風による屋根材の捲れを起こす可能性があります。まずは軒やケラバの雨漏りを改善させてから軒天の復旧工事にあたりましょう。
原因
瓦屋根はケラバと破風板の一部を覆うようにL字型に製造された専用のケラバ瓦を取り付けます。排水を担う水切りの高さも十分にあり、オーバーフローを起こすようなリスクはありません。
しかし瓦屋根もケラバでの雨漏り・破損が多いと言えます。というのもケラバはそもそも屋根の端部ですので、保護しているケラバ瓦は雨風の影響をダイレクトに受けます。下地木材に対して釘で止められているケラバ瓦が、台風や突風で一気に捲れ上がるということもあるのです。
また瓦屋根のケラバ部分は瓦の形状や浮き等の劣化から隙間ができやすい傾向があります。そこからスズメやツバメが入り込み巣を形成してしまったというお住まいは非常に多いです。枝葉やごみが溜まればスレート屋根同様オーバーフローを起こしかねませんし、ケラバ瓦が浮いている場合は飛散のリスクも高まります。
対策
ケラバ瓦が被害を受ける主な原因は強風です。そのためまずはケラバ瓦が飛散しないよう土台を補強しておくことが非常に重要です。ケラバ瓦の下地は多くが木材ですので、腐食し固定力が低下してしまう前に木材、もしくは腐食しにくい樹脂製の板材へ交換しましょう。
この際端部から鳥が侵入できないよう、南蛮漆喰を積むことが重要です。錆びず抜けにくいステンレス釘で固定を行う事で、強風での飛散リスクを最小限に抑えることができます。
同様の鳥害は軒先でも起こり得ますので、軒先面戸で隙間を塞ぐ対策をケラバ補修と同時に行うのが有効的です。
今回はケラバ板金内部でのオーバーフローによる雨漏りを中心にご紹介しましたが、台風や積雪による重みでケラバが被害を受けることもあります。そのような場合は火災保険を利用しましょう。
既にご存じの方は多いと思いますが、火災保険はケラバの交換費用だけでなく工事に欠かせない足場仮設費用も申請できます。
特にケラバは2階部分が被害を受ける機会が多い為、足場の仮設は必須といっても過言ではありません。 火災保険は被災後3年以内であれば申請できますので、見逃すことなく利用するようにしましょう。
目に見える破損であればわかりやすいですが、いつからか壁際や天井の端から雨漏りが起きてしまったというケースもあります。 この場合は散水試験の上、屋根のどこから雨漏りが生じているかを確認することもできますので、諦めずに根本的な原因を突き止めましょう。
このページでは雨漏りの原因となりやすいケラバに関してご紹介いたしました。聞きなれないケラバですが、多くのお住まいで雨水や風の吹き込みを防ぎ住宅の劣化を防いでいる大事な部分です。
破風板はケラバでは保護しきれない側面を保護している部材です。ケラバを固定している釘が打ちつけられている場所は破風板ではありませんが、破風板が腐食し欠損してしまうようなことがあれば雨風が吹き込みケラバの下部を劣化させる要因も生んでしまいます。破風板が木材であれば塗装で安価に補修することも可能ですが、ガルバリウム鋼板による板金カバーを行う事で、メンテナンス回数を大幅に減らすことができます。鼻隠しとは違い雨樋の脱着作業が無く、比較的安価に施工が可能ですので費用に関してはお問い合わせください。
ケラバの補修時は部分的にしても足場仮設が必要となります。今後無駄な足場仮設を行わないためにも補修が必要な面だけでも補修箇所をチェックしまとめて補修を行うように心がけましょう。私たち街の屋根やさんは屋根工事はもちろん、ケラバや軒先、破風板等の補修も承っております。点検・お見積りは無料ですので、軒天に黒ズミが出来てしまっている、ケラバ板金が破損している、台風で被害が出ていないか見てほしいといった不安がございましたらお気軽にご相談ください。
ケラバに関するまとめ
●ケラバは屋根妻側(雨樋が取り付けられていない)面の外壁から出ている屋根部分を指します。昔は雨水や風の吹き込み、日当たりの調整等で30㎝以上はあったのですが、敷地状の問題、デザインを重視し軒やケラバがほとんどない住宅が増えてきました。
●化粧スレート・金属屋根・アスファルトシングルの場合はケラバに専用の板金が取り付けられていますが、土やごみが溜まる事で雨水を滞留させオーバーフローを起こさせることで雨漏りに発展してしまいます。オーバーフローを防ぐ対策はいくつかありますが屋根材施工後は確認できない為、施工中の写真を撮影してもらい保管するようにしておきましょう。
●ケラバ瓦はオーバーフローを起こしにくい構造ですが、強風の影響で釘が抜け飛散することもあります。また鳥害から雨漏りに発展することもありますので、鳥の侵入口を塞ぎながら瓦が浮き飛散しないような固定を行う必要があります。
●ケラバはオーバーフローによる雨漏り以外に風災や積雪で破損してしまう事もありますので、火災保険を利用し自己負担なく原状回復するよう努めましょう。原因が分からない雨漏りは点検・散水試験の上突き止めることもできますのでお気軽にご相談ください
●ケラバと密接な関係にあるのが破風板です。ケラバも破風板も雨風の吹き込み防止に貢献しており、どちらかが破損することで補修箇所が拡大する可能性もあります。ケラバの補修を検討される際は必ず他にも被害がないかを確認し、的確な補修を行えるよう心がけましょう。
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