「瓦屋根=地震に弱い」は本当?地震対策のポイントを解説!
2024年1月1日午後4時10分頃、石川県能登地方を大地震が襲いました。
この地震の規模はマグニチュード7.6と非常に大きく、1995年の阪神・淡路大震災(M7.3)や2016年の熊本地震(M6.5)を上回るものでした。
発生から数か月が経過した現在も、多くの方が避難を余儀なくされ、復旧には長い時間を要しています。
特に輪島市や珠洲市では被害が甚大で、倒壊した住宅や建物の多くが昔ながらの工法で建てられた瓦屋根の家でした。
現在、屋根材はガルバリウム鋼板やスレートといった軽量素材が主流となっていますが、従来の重い瓦屋根に対する耐震性を不安に思う方も多いでしょう。 そこで今回は、昔ながらの瓦屋根の耐震上の課題と、地震に備えるための対策について詳しく解説します。
能登半島地震で甚大な被害を受けた建物の多くは、伝統的な工法で施工された瓦屋根の住宅でした。
瓦1枚の重さは約3kgあり、さらに土葺き工法で使用される土や下地の重量を含めると、
1坪あたり約240kgもの重さになります。
瓦屋根はその重量ゆえに建物の重心が高くなり、地震時の揺れが大きくなる傾向があります。
そのため、最近では地震対策の一環として、ガルバリウム鋼板やスレートなどの軽量な屋根材へ変更するケースが増えています。
ただし、
「屋根が軽ければ倒壊のリスクがなくなる」というわけではありません。
また、重い瓦屋根だからといって、必ずしも倒壊するとも限りません。
家の耐震性は、屋根材の重さだけで決まるものではなく、建物全体の構造や補強の有無が重要な要素となります。
確かに、今回の地震で倒壊した住宅の多くは築年数が古く、耐震基準が十分でない状態のまま使われていたものが大半でした。
しかし、新たな耐震基準に基づいた「ガイドライン工法」※で施工された瓦屋根の住宅は、大きな被害を受けずに耐え抜いたことが確認されています。
今回の震災で瓦屋根の家に被害が集中した主な原因は、瓦の固定方法が不十分だったことや、建物自体の耐震補強が施されていなかったことにあります。
つまり、適切な施工と補強が施されていれば、瓦屋根であっても十分な耐震性を確保できるのです。
地震に強い家づくりを考える際は、屋根の重量だけにとらわれず、建物全体の耐震補強を検討することが重要です。
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※国土交通省 国土技術政策総合研究所「令和 6 年能登半島地震による建築物の津波被害及び瓦屋根の地震被害現地調査報告 速報」より引用
※「ガイドライン工法」とは
2001年に策定された「瓦屋根標準設計・施工ガイドライン」に基づいた施工方法です。屋根面の瓦はすべて釘で固定し、棟部分には芯材や補強金具を使用することが推奨されています。
能登半島地震で倒壊した建物の多くは、築年数が経過し、耐震性が十分でない住宅でした。
特に、「瓦屋根標準設計・施工ガイドライン」が制定される前に建築された住まいでは、土葺きや引っ掛け桟葺きの工法が主流であり、瓦が屋根の下地にしっかりと固定されていないケースがほとんどでした。
そのため、大地震の際に瓦が落下し、地域全体に深刻な被害をもたらしました。
土葺き |
屋根瓦を土で固定する伝統的な施工方法。 1923年の関東大震災および1995年の阪神・淡路大震災を契機に、倒壊リスクが広く認識され、現在ではほとんど採用されなくなった。 |
引っ掛け桟葺き |
屋根の下地に桟木を設置し、その桟木に瓦を引っ掛けたうえで釘で固定する工法。 一般的には瓦4枚ごとに釘1本を打ち込むが、棟部分の瓦は土や漆喰で積み上げて施工されることが多い。 |
ガイドライン工法 |
瓦を桟木に引っ掛け、最低でも瓦1枚につき1本の釘で固定することを基準とした改良工法。 地域ごとの風速条件や地表面の特性に応じた基準も設けられ、より耐風・耐震性に優れた施工方法として普及している。 |
昔ながらの土葺き工法は、瓦を土の粘着力のみで固定するため、時間の経過とともに瓦が剥がれやすくなり、地震時には落下のリスクが非常に高くなります。
現在も採用されている引っ掛け桟葺き工法は、ガイドラインの制定により釘の本数が増え、施工基準が明確化されたことで、より耐久性の高い仕様へと進化しています。
実際に、ガイドライン工法で施工された瓦屋根は能登半島地震でも落下を免れており、瓦屋根自体が地震に弱いのではなく、従来の施工方法に問題があったことが明確になりました。
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築年数が経過し、土葺き工法の瓦屋根を使用している場合、地震や台風の影響を考慮すると葺き替えが望ましいとされています。現在のままで問題はないのか?最適なリフォーム方法と併せて詳しく解説します。
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屋根の耐震・防災対策とは?詳しくはこちら
現代の瓦屋根は、美しさや耐久性を維持しつつ、地震に備えた改良が進められています。
2022年1月以降、新築住宅ではすべての瓦を固定することが義務化され、防災機能を強化した瓦の使用が一般的になりました。
しかし、築年数の古い瓦屋根の住宅は依然として多く、予期せぬ地震で瓦が落下する危険性があります。
屋根は建物を守る重要な部分です。古い瓦屋根の耐震性を高めるために、以下の3つの対策をおすすめします。
① 棟の補強(ガイドライン工法による棟取り直し)② 防災瓦への葺き替え③ 軽量な屋根材への葺き替え
瓦屋根の耐震性を向上させるための対策として、「棟の補強工事」が重要になります。
特に、ガイドライン工法を用いた棟の改修は、地震時の倒壊リスクを軽減する効果的な方法の一つです。
棟瓦の補強とは、屋根の最上部にある棟のズレや漆喰の劣化を改善し、しっかりと固定し直す工事のことです。棟部分は年数が経つとともに接合部の強度が低下し、揺れによって崩れやすくなるため、適切な補修を施すことで建物の安全性を高めることができます。
ガイドライン工法では、まず既存の棟瓦を撤去し、その後、棟補強金物や耐久性の高い芯材を取り付けます。さらに、防水性に優れた南蛮漆喰を使用し、シリコン成分を含む強固な固定剤で棟瓦を積み直すことで、長期間にわたり耐震性を維持できる構造に仕上げます。
昔ながらの瓦屋根では、棟が高く積まれているケースが多く、重量が増して耐震性が低下していることがあります。このため、補修の際に棟を低めに施工し直すことで屋根全体の軽量化を図り、さらに耐震性と耐久性を向上させることが可能です!
瓦屋根の耐震対策として、もう一つ有効なのが防災瓦への交換です。
防災瓦とは、従来の瓦が持つ「重さ」や「落下のリスク」といった欠点を克服し、地震や強風に耐えられるよう設計された改良型の瓦です。特に、特殊なロックアーム構造を採用しており、瓦同士がツメでしっかり噛み合うことで、ずれや浮きを防ぎ、屋根全体の耐震性を向上させます。
ツメによる連結構造:瓦1枚ずつがかみ合うため、ズレや浮きが発生しにくい
ビス・釘固定:従来の瓦と違い、しっかりと屋根に固定するため、落下の危険性を軽減
軽量化設計:従来の瓦に比べ約10%軽量化されており、屋根全体の耐震性能を向上
現在、新築やリフォームで使用される瓦の多くは防災瓦となっているため、築20年以内の比較的新しい住宅では問題ないケースが多いでしょう。
しかし、2001年以前に建築された住宅で、これまで一度も瓦のメンテナンスを行っていない場合や、すでに瓦の浮きやズレが見られる場合は注意が必要です。そのまま放置してしまうと、大きな地震の際に崩落し、建物や周囲に被害を及ぼす可能性があります。
耐震性を強化し、安全な住まいを守るためにも、定期的な点検と、必要に応じた防災瓦へのリフォームをおすすめします。
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地震時の安全性に優れた瓦の特長を分かりやすくご紹介。実際の施工事例や費用相場、防災機能を備えた主要な瓦製品についても詳しく解説します。
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耐震性の高い防災瓦とは?
瓦屋根の地震対策として、軽量屋根材への交換も非常に有効な方法です。
瓦屋根を軽い金属屋根に変更すると、建物の柱や壁の強度はそのままに、屋根の総重量を軽減できるため、建物全体の耐震性能が向上します。また、耐震等級の向上にもつながるため、地震に強い住まいづくりが可能になります。
特に、現在の軽量屋根材の中で主流となっているのがガルバリウム鋼板です。ガルバリウム鋼板は、軽量かつ耐久性が高いため、新築・リフォームのどちらでも人気があります。
屋根を軽くすることで、地震の揺れによるダメージを抑えることができるため、瓦屋根のままでは不安を感じる場合は、軽量屋根材への葺き替えを検討するとよいでしょう。
ガルバリウム鋼板
アスファルトシングル
化粧スレート
樹脂繊維入り軽量瓦
ガルバリウム鋼板は、現在最も普及している金属屋根材のひとつで、瓦屋根と比較すると約10分の1の軽さを誇ります。
かつての金属屋根は「夏場の暑さ」や「雨音の大きさ」、「シンプルすぎる見た目」などがデメリットとされていました。しかし、最近のガルバリウム鋼板は、断熱材一体型の製品や、遮熱塗料が施されたものも多く、断熱性・遮音性が大幅に向上しています。また、デザイン性も向上し、モダンな住宅にもマッチするおしゃれな製品が増えています。
瓦屋根からのリフォームを検討している場合は、耐久性・断熱性・遮音性に優れ、デザインも豊富なガルバリウム鋼板屋根が最適な選択肢の一つです。
アスファルトシングルは、北米で100年以上の歴史を持つ屋根材で、グラスファイバーを基材にアスファルトを含浸させ、表面に石粒を施した構造になっています。
軽量でしなやかなため、地震の際にもズレや割れが発生しにくいのが特徴です。瓦屋根に比べると約5分の1の軽さであり、日本国内でも戸建て住宅の屋根材として徐々に採用が増えています。
セメントを主成分としたスレート屋根材は、瓦よりも薄く、重さは約3分の1と軽量です。特に、コストパフォーマンスの高さと施工できる業者が多いことから、長年にわたり住宅用屋根材の主流として使用されてきました。
最近では金属屋根の人気が高まってきていますが、比較的手頃な価格で施工できるため、コストを抑えたい場合には依然として有力な選択肢となっています。
一般的な瓦の見た目を保ちつつ、大幅に軽量化された屋根材です。代表的な製品にケイミューの「ROOGA」があり、従来の瓦と比較して半分以下の重量を実現しています。
さらに、1枚ずつ釘でしっかり固定するため、地震による落下のリスクを大幅に軽減できます。
瓦の高級感を残しつつ、耐震性を向上させたい場合におすすめの屋根材です。
耐震性の向上を目的とした瓦屋根の葺き替え工事では、自治体によっては助成金や補助金の対象となる場合があります。
補助制度の内容は地域ごとに異なるため、屋根のリフォームを検討している場合は、まずお住まいの自治体に問い合わせてみることをおすすめします!
2001年より前に施工された瓦屋根は、多くの場合、適切に固定されていないため、地震の際に瓦が滑り落ちる危険があります。
ただし、築年数の長い瓦屋根の住宅が倒壊のリスクを抱えている最大の要因は、建物全体の耐震性が十分ではなく、経年劣化によって構造が弱くなっていることです。
屋根の重さや施工方法は、住宅の耐震性能に大きく影響を与えます。特に、従来の工法で取り付けられた瓦屋根は、揺れに対して脆弱であり、大きな地震が発生した際に屋根が崩れ落ちる可能性があります。
最悪の場合、建物全体が損壊する危険性も否定できません。
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また、施工後に快適に暮らせるかどうかも含め、築年数や屋根のコンディションを細かくチェックします。
点検はお客様立ち会いのもとで行い、経験豊富な屋根の専門家がすみずみまで確認いたしますので、安心してご相談ください!
瓦屋根は本当に地震に弱いのか?まとめ
●瓦屋根=地震に弱いというわけではありません。
●瓦屋根の住宅が地震で倒壊しやすい原因は、築年数が経過し耐震性が低下していることや、古い施工方法で屋根がしっかり固定されていないことにあります。
●築年数が古く、耐震性に不安がある方には、以下の対策を推奨します。
① 崩れやすい棟部分の補修(棟の積み直し)
② 地震や強風に強い防災瓦への葺き替え
③ ガルバリウム鋼板など、軽量で耐震性に優れた屋根材への交換
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