【お問い合わせのきっかけ】

ビフォーアフター

【点検の様子】

　

箱を組み合わせて、パラペットが意匠となっている陸屋根を何段も重ねた凝った洋風のデザインのお家です。白い壁に、赤いシングルで巻いたパラペットが目立つ、クラッシックな雰囲気を纏ったとてもお洒落な建物です。

 

　

下から見てみると陸屋根のように見えましたが、梯子をかけて登ってみると、陸屋根ではなくて何と瓦棒屋根でした。建物の築年数や造り、屋根の傷み具合からするとおそらくはトタン屋根なのでしょう。塗膜は剥がれ、錆びは浮き、棟板金も剥がれる寸前です。

 

　

おそらく箱を重ね合わせたイメージの建物を造るために屋根を平たく見せるべく、瓦棒屋根の周りにパラペットを設けたのでしょう。内側には箱樋を設けてありますが、大雪の影響を受けたためかパラペットが外に傾斜してしまっています。

 

　

トタンと思われる屋根材の状態はちょっと深刻です。塗膜の剥がれている部分は何とかなりそうですが、心木が収められている桟の部分は経年劣化による錆で腐食し、崩れ始めています。既に雨漏りが始まっていてもおかしくない状態です。何とかしなければなりません。

 

　

目の錯覚のようにも見えるのですが、軒天の中央と軒先が膨らんでいます。雨水を吸った結果、膨張してしまったのでしょうか。パラペットと箱樋のちょうど下の部分に当たるため、悪い予感しかしません。パラペットは解体し、撤去してしまった方がいいかもしれません。

 

【施工の様子：屋根の解体・撤去】

　

これまでの屋根を解体していきます。棟を撤去すると、中の貫板は腐食し、崩れていました。瓦棒の桟も同様の状態です。長年、雨水が溜まっていたらしく、カビも生えていますし、腐食も拡がっています。

 

　

まずは綺麗に清掃します。腐食しているところは取り除き、補修します。その上で12ｍｍのコンパネを野地板として増し貼りします。それから、防水紙を貼っていきます。これで屋根の下地も健全となりました。

 

　

デザイン的にも大きな役割を担っていたパラペットですが、解体すると軒先に軸組みも垂木もありません。パラペットは張り出させていた薄い軒天の板と屋根の板金で支えられていたのです。デザインだけを重視した恐ろしい造りです。地震の下地の腐食がありながらも、よく落下しなかったものです。事故が起こる前に屋根の改修ができて一安心です。

 

　

パラペットが外側に傾斜するのも、軒天が膨らむのも無理のないことです。これは軸組みからやり直さなければならず、大工仕事が必要となりました。大工さんに軸組みを組み直してもらいます。屋根葺き替えはそれからになります。まずは、躯体からしっかりつながった骨組みを作ります。

 

　

その上に、ケイカル板の破風板を支えるコンパネを取り付けます。その上に、破風板を貼って、軒天を取り付けます。これで構造的にもかなり強くなりました。

 

　

弱々しかった屋根も頑健になりました。これで安心して屋根を葺きかえることができます。

 

　

屋根の工事を再開です。野地板・防水紙まで完了しているので、角材で桟葺き（心木を固定すること）をして、コの字型の板金をその間にはめていきます。

 

 

　

角材の上に、「カッパ」という同じく下向きのコの字型の板金を被せてそれを横から釘で留めていき、軒先に雨水の浸入を防止するキャップを被せます。

 

　

最後に貫板を設置し、棟板金を取り付け、壁に接しているところは雨押えを取り付けて、屋根葺き替えの竣工です。緩い勾配ですが、普通の瓦棒葺きの屋根になりました。

 

　

続いて、屋根塗装に入ります。お施主様はお洒落なお家に住んでいるだけあって、屋根の色にも拘りました。

 

　

塗装前に較べて屋根が茶色くなりました。最後に雨樋を設置して完成です。

 

【屋根葺き替え竣工】

とてもお洒落な建物でしたが、いざ工事を始めてみるとデザインのみを重視した造りでびっくりしましたが、普通の屋根に戻すことができました。パラペットを撤去しましたので、地震の際に落下してくる危険性もなくなりました。安心してお過ごしください。

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