外壁の状態を点検調査

お客様の住宅は築20年で、外壁はサイディング仕様です。

近年の住宅では、およそ7割ほどがサイディングを採用していると言われています。

セメントと繊維質を主原料とするこの外壁材は、何度も塗り重ねるモルタルと異なり、外壁の形状に合わせてボードを張り付けていく工法のため、比較的工期が短く、費用を抑えやすい点が普及につながったと考えられます。

サイディングには窯業系・樹脂系・木質系・金属系などさまざまな種類がありますが、現場では窯業系が最も多く、次いで軽量で耐久性の高い金属系がよく採用されています。

「クラック」と聞くと、モルタル外壁の表面に出来るひび割れを思い浮かべますが、サイディング外壁でも同様にひびが生じ、時間とともに広がっていきます。
では、モルタルとサイディングでは、ひびが発生する理由にどのような違いがあるのでしょうか。
まずモルタルは、水・砂・砕石などを混ぜて作るため、乾燥収縮が避けられず、材料の特性としてひびが発生しやすい面があります。

気温差によっても変化が生じるため、年数が経つほどひびが大きくなるケースも珍しくありません。
施工時の温度や材料の配合、攪拌状況によっても影響を受けるため、適切に施工してもひびが出ることがあります。
一方、サイディングは工場で成形されるため品質のバラつきは殆どありません。

しかし、四隅にひびが見られる場合は、固定時の釘打ちによる影響で、時間とともに広がる例がよく見られます。
また、材料の一部に水分が多く含まれていた場合、乾燥収縮によりひびが生じることもあります。

どの外壁材であっても、施工やメンテナンスを丁寧に行っていても、時間の経過とともにヒビが生じるのは避けられません。

問題は、そのヒビを放置すると雨水が浸み込む原因となり、室内への浸入につながってしまう点です。

今回の住宅でも、黒く変色している箇所が確認でき、サイディングが過度に水分を吸って腐食を起こしている状態でした。

庇（ひさし）との取り合い部分で調整された外壁のようですが、水が回ったのか、触ると崩れてしまうほど劣化が進んでいます。

釘の周囲でサイディング表面が剝がれており、徐々に劣化が進行している状況でした。

サイディングはボード同士を密着させて施工できないため、目地を設けてシーリングで防水処理を行います。

しかし、このシーリングはおよそ5年ほどで劣化が始まります。

さらに建物の揺れによって大きなひび割れや裂けが生じることもあり、非常にデリケートな部分といえます。

散水試験

まずは、この部分から雨水が入っているのかどうか、散水試験で確認してみます。

バルコニーがあるため、庇に直接当たる雨は多くないですが、庇が原因なのか、バルコニーとの取り合いなのか、あるいは別の場所から水がまわっているのかを見極める必要があります。

時間を分けながら、室内と屋外の状況を順番に確認していきましょう。

散水試験は水をかけるだけの作業に見えますが、手順を誤ると雨漏りの原因の判別できません。
外壁であれば「下部から」、屋根であれば「軒先から」といったように、実際の雨の流れに合わせて進める必要があります。

下から上へ向けて水をかけるのは、日常の雨の状況とは異なり、正しい判定に繋がりません。
雨は上から降り、風で吹き込むことはあっても、雨漏りが発生するのは特定の条件が重なった時です。

そのため、「どんな状況で・どの程度の雨量で・どのタイミングで」雨漏りが起きるのかを踏まえた上で、実際の状況を再現することがとても重要になります。

庇の上から散水試験を行ったところ、室内のサッシ周辺でも雨水の侵入が見られました。
実際に水をかけても、雨水の流れ方によっては室内への到達に時間差が生じることがあるため、試験中に変化が出ない場合もあります。

しばらく様子を見る必要があるのはこのためです。
今回は外壁からの浸入が確認できましたが、バルコニーの床との取り合いにもヒビが見られます。

現時点で雨水が入っていないとしても、将来的に不具合を招く可能性があります。
補修を行う際は、この部分にもシーリングによる防水処理を施しておく方が安心です。

シーリング処理

既存のシーリングを撤去

目地が原因の雨水侵入であれば、目地シーリングを打ち直すことで改善できます。
外壁の軽いひび割れは、補修材を充填することで雨水の侵入を防ぐことができます。

しかし、今回のように外壁材そのものが腐食している場合は、補修だけでは十分ではありません。
また、反りや浮きが見られる場合も、張り替えが必要になります。

まずは目地にある既存のシーリングを撤去し、傷んでいる外壁材を順番に取り外していきます。

内側の様子を見ると、透湿シートに雨染みが広がっており、長期間にわたって雨水が入り込んでいたと考えられます。

本来、壁内にこもった湿気を外へ逃がすための役割を持つ透湿シートですが、ここまで傷んでしまうと十分に機能しなくなってしまいます。

新しい外壁材へ張り替え作業

新しい外壁材への張り替えを行います。
色は異なりますが、後から塗装を施すため問題はありません。
既存の柄に近い外壁材があれば、そのまま使用可能です。

もし類似の外壁材が入手できない場合は、見た目のバランスを考え、切りのよい範囲まで張り替えることもありますが、最終的にはお客様のご希望に応じて対応します。
張り替え後も、目地から雨水が入り込まないように、シーリング工事を行います。
使用するのは、耐候性と伸縮性に優れた変成シリコン系シーリング材です。

高耐候性のシリコン系もありますが、塗装との相性が良くないため適していません。
DIYや簡易補修であっても、外壁に使用するシーリング材は慎重に選ぶことが重要です。

シーリング材を充填

外壁を汚さないよう、マスキングテープで養生した上でシーリングを充填していきます。

充填後は、硬化する前にマスキングテープを剥がし、触らずに自然に硬化させます。

表面は1日ほどで触れる程度に硬化しますが、内部まで完全に固まるには2〜3日かかります。

不要に触れないよう注意しながら作業を進めましょう。

外壁塗装工事

「下塗り」作業

目地の硬化後、周囲の色と合わせるために塗装を行います。

まず下塗りを行い、仕上げ塗料との密着性を高めます。

既存の外壁が傷んでいる場合は塗料の吸い込みが大きくなりますが、新しい外壁材の場合は、いかに塗料をしっかり密着させるかがポイントです。

また、既存サイディングの塗膜が剥がれないよう、事前に洗浄して表面をきれいに整えておきます。

「中塗り・上塗り」作業

乾燥後、中塗り・上塗りと順に仕上げ、塗装工事は完了となりました。

周囲のサイディングとの柄幅が異なるため、玄関まで横一直線に伸ばし、できるだけ自然に見えるよう調整しています。

部分的ではありますが、近似色で塗装したことで外壁全体が1トーン明るく見える仕上がりになりました。

完工

「シーリング処理・外壁張替工事・外壁塗装工事」の作業が無事に終わり、工事は完工となりました。

塗装により、新しく張り替えたサイディング外壁とシーリングの表面保護が可能となり、雨漏りの心配からも解放されました。
サイディングはボード状のため、モルタル外壁とは異なり、部分的な張り替えが可能です。

ただし、外壁材も進化を続けているため、当時の柄が現在は入手できない場合もあります。
そのため、補修の際には柄が若干異なることも考慮する必要があります。

港北区の現場では、外壁張替工事・塗装工事・目地防水工事により、雨漏りを改善することができました。
雨漏りでお困りの方や、原因がまだ特定できていない方は、街の屋根やさんまでご相談ください。→(0120-989-936)