屋根や外壁など、建物に使用する「金属」というと
「トタン」や「ブリキ」を想像する方も多いことでしょう。
「ガルバリウム鋼板」という金属も、屋根や外壁材としてだけでなく、私たちの身の周りでたくさん使われている金属の一つです。
例えば、自動販売機の金属部分やガードレールにも利用されているのです。
ここではガルバリウム鋼板をはじめとする金属屋根についてサクッとご説明します(^▽^)/
鋼板の特徴
「ブリキ」は、鉄の表面に「スズ(錫)メッキ」を施したものです!
スズは体内に入ってもすぐに排出されてしまうため、安全性が高いと言われていることから、食品の缶詰容器にも使われています。
また、「ブリキのおもちゃ」のイメージをお持ちの方も多くいらっしゃるかもしれません。
ブリキは、雨樋などで多く使われてきましたが、
耐久性が低いという点があります(>_<)柔らかいスズでメッキしているため、傷がつきやすく、一度傷がついて鋼板がむき出しになると、そこから一気に錆びてしまいます。 「トタン」は、鉄の表面に「亜鉛メッキ」を施したものです(^▽^)/安価で施工期間も短いことから爆発的に普及しましたが、屋根材では
「瓦」だけでなく
「スレート」、外壁では
「モルタル」や
「窯業(ようぎょう)サイディング」も出てきたため一時的な流行にとどまりました。
トタンは、水分に触れることにより、メッキ成分の減少が起こります(-_-;)
メッキ成分が減少すると錆が進行してしまうため、
塗装によるメンテナンスが必要になります。
「錆びやすい」というイメージがありますが、こまめにきちんとメンテナンスを行うことで15~20年の耐用年数があるとも言われているんですよ(^^)v
ガルバリウムは何が違うの?
ガルバリウム鋼板も、トタンやブリキと同じ「鉄」で、「メッキ」を施したものですが、施す「メッキ」の成分によって「鉄」の寿命が大きく変わります。
ガルバリウム鋼板は
「ガルバ」や
「GL鋼板」という言い方が多いです。 JIS規格で「溶融55%アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板」と呼ばれ、表面に55%のアルミ、亜鉛43.4%、シリコン1.6%で構成されています。 亜鉛の「防食作用」とアルミニウムの「耐食性」により、長期にわたり錆を防ぐとされています(*^-^*) ただし、あくまで表面にメッキをしているため、傷がついたり耐久性を損ねる要因が生じた場合は、その部分から錆が生じ、腐食の進行を加速させてしまう可能性が大きくなります(>_<) 状況により耐久性が大幅に低下する可能性もあるということを覚えておく必要があります。 ガルバリウム鋼板の厚みは通常0.35mmから0.8mm程度で、非常に薄い金属板です。この薄さと強度の組み合わせにより、ガルバリウム鋼板は
軽量でありながら非常に丈夫です。そのため、建物の屋根材や外壁材として広く使用されています!(^^♪
ガルバリウム鋼板の歴史
ガルバリウム鋼板の開発は、従来の鋼板の欠点を克服するためのものでした。
鉄は酸化しやすく、錆びやすいという性質があります。これを防ぐために、ブリキやトタンといった表面処理が施された鋼板が開発されました。
ブリキは、鉄の表面をスズで覆うことで耐食性を持たせた鋼板です。しかし、スズは傷に弱く、表面に傷がつくとその部分から錆びが進行するという欠点がありました。
一方、トタンは鉄の表面を亜鉛で覆うことで耐食性を持たせた鋼板です。亜鉛は犠牲防食効果を持っており、表面が傷ついても亜鉛が溶け出して傷口を保護するため、ブリキよりも耐食性が高いという利点がありました。
しかし、トタンも完璧ではありませんでした。酸性雨や沿岸部の塩害など、過酷な環境下では劣化が早く進行するという問題があったのです!(>_<)
これらの問題を解決するために開発されたのがガルバリウム鋼板です。
ガルバリウム鋼板の応用と利用
ガルバリウム鋼板は、その優れた耐久性と防食性から、さまざまな建築用途で使用されています。特に
屋根材や
外壁材としての利用が一般的です。
屋根材として使用する場合、ガルバリウム鋼板は軽量でありながら強度が高いため、地震や強風などの自然災害に対しても高い耐久性を発揮します。
また、ガルバリウム鋼板は外壁材としても優れた性能を発揮します。その耐食性により、長期間にわたって美しい外観を維持することができます。
さらに、ガルバリウム鋼板は
加工が容易であり、さまざまな形状やデザインに対応できるため、
建物のデザイン性を向上させることができます。
最近では、ガルバリウム鋼板に断熱材を組み合わせた製品も登場しています。これにより、ガルバリウム鋼板の断熱性や遮音性が向上し、より快適な住環境を実現することが可能となりました!
ガルバリウム鋼板は、その優れた性能と多様な応用性から、今後ますます需要が高まることが期待されています(^^♪
※「メッキ」とは・・金属または非金属の表面を他の金属の薄膜で覆うこと。金属の場合は変色や腐食を防ぐために、錆や変色に強い金属の薄い膜をかぶせる意味
ガルバリウム鋼板使用のメリット・デメリット
メリット
1.錆びに強く、長期耐久性に優れている:トタンと同様に亜鉛メッキ鋼板の「
犠牲防食機能」と、アルミメッキ鋼板の
「不動態皮膜(保護作用)」により長期耐久性を合わせ持つため、トタンは耐用年数が5~10年程度のところ、ガルバリウム鋼板は、10年~20年と長寿命化しています!
アルミニウムは表面に強固な酸化被膜を形成し、亜鉛は犠牲防食効果を持っておりますので、二重の保護により、ガルバリウム鋼板は非常にサビにくいのです。ただし、
全くサビないわけではなく、定期的なメンテナンスが必要です。
2.耐震性に有利:ガルバリウム鋼板は非常に薄い板(1~3mm)のため、
軽くて丈夫です。地震の際、ガルバリウム鋼板は家屋の構造への負担を軽減し、瓦などに比べ地震の揺れに強いです。
そのため、重ね葺きや外壁の重ね張りなど、全体の重量が増えるような工事に向いています。軽量であれば、今までと同じ構造にした場合、簡素な構造で耐震性を確保でき、より安全なお住まいになるんですね(^_-)-☆
3.スタイリッシュなデザイン:ガルバリウム鋼板は、カラーバリエーションも幅広く、単色で施工することも多く基本的にはどの色を選んでもシャープでスタイリッシュな印象を与えます。
好みもありますので、なかには無機質で「トタンの倉庫みたい」と感じる方もいるかもしれません。
4.メンテナンスが比較的容易:ガルバリウム鋼板は、他の金属製建材に比べてメンテナンスが比較的容易です。アルミニウムと亜鉛の合金めっきにより、自然環境下での劣化が遅いため、定期的なメンテナンスの頻度も少なくて済みます。
しかし、全くメンテナンスが不要というわけではありません。特に、沿岸部や工業地帯などの過酷な環境条件下では、定期的な水洗いや点検が推奨されます。これにより、錆びや劣化を未然に防ぎ、長期間にわたって建物を美しく保つことができます(^^♪
5.防音・耐火性の向上:ガルバリウム鋼板には、断熱材を一体化した製品もあります。これにより、断熱性や遮音性が大幅に向上し、建物全体の居住性を高めることが可能となりました。
従来の金属製建材は、断熱性や遮音性に劣るとされていましたが、断熱材一体型のガルバリウム鋼板製品を使用することで、これらの問題を解決できます。これにより、快適な住環境を提供しつつ、建物の外観も美しく保つことができます!
また、耐火性にも優れています。アルミニウムと亜鉛の合金めっきにより、火災時にも高い耐火性能を発揮します。これは、建物の安全性を高める重要な要素であり、特に防火対策が重要な地域や用途において非常に有益です。
デメリット
1.遮熱性・断熱性が低い:金属のため、
ガルバリウム鋼板自体に断熱性能はありません(>_<)そのため、一般的に屋根材の下や屋根裏に断熱材を使用します。
2.防音性が低い:金属のため、雨の日には「雨音がうるさい」と感じるかもしれません。
3.犠牲防食・不動態皮膜をもってしても錆びるときは錆びる:ガルバリウム鋼板は従来のトタンやブリキに比べて耐食性が高いとはいえ、全く錆びないわけではありません。ガルバリウム鋼板の特徴にもありますが、
表面のメッキが剥がれるような要因があれば一気に錆びてしまいます。
錆びの種類には、
赤錆び、
白錆び、
もらい錆びなどがあり、それぞれ発生条件が異なります。赤錆びは表面に傷がつくことで発生し、白錆びは高温多湿の環境で発生しやすいです。電食作用によるもらい錆びは、異なる金属が接触することで発生します。これらの錆びを防ぐためには、定期的なメンテナンスが必要です。
また、塩害に弱いため
海岸地域でのご使用にはお勧めできません。製造しているメーカーでは年に数回の水洗いによるメンテナンスを推奨しています。
4.初期費用が高め:ガルバリウム鋼板の初期費用は、他の外装材と比べて高めです。これは、素材自体の価格に加え、施工に専門的な技術が必要なためです。特に、施工時には他の金属と接触させないように注意する必要があり、その分施工コストが上がることがあります。
また、ガルバリウム鋼板は非常に薄いため、施工時に傷がつきやすく、慎重な取り扱いが求められます。これにより、施工業者の選定も重要な要素となり、信頼できる専門業者に依頼することでコストがかかる場合があります(>_<)
5.メーカー保証がシビア:ガルバリウム鋼板のメーカー保証は、
非常に厳格な条件が付いています。特に、
台風や強風による破損、不慮の事故による傷などは保証対象外となることが多いです。また、現場加工を行った場合も保証対象外となることがあり、注意が必要です。
現場加工を行わずに施工することは難しいため、保証条件をよく確認し、信頼できる業者に依頼することが重要です。また、保証期間が長い製品を選ぶことも、安心して使用するためのポイントとなります。
ガルバリウム鋼板に最適なカバー工法
カバー工法とは、既存の
屋根や
外壁の上から重ねて施工する工法です。
軽量のガルバリウム鋼板に最適な工法です。
カバー工法は、既存の屋根や外壁を剥がして処分する費用や工事期間を抑えることができます。
アスベスト含有の屋根の場合は、屋根材を剥がす際にアスベストが飛散する危険性や処分費用が通常より高額になるため、そのまま上から新しい屋根材を被せる屋根カバー工法はおすすめです(*^^)v
進化したガルバリウムをご紹介
2014年には、従来のガルバリウムに2%のマグネシウムを加えた「
エスジーエル(SGL)」が登場しました。
錆にも強く、遮音・遮熱効果にも優れ、それにより、金属建材の保証年数がさらに伸びました。塩害にも強くなったことで保証地域も拡大しました。
現在ではほとんどの金属屋根メーカーがSGLを採用しています(^▽^)/ガルバリウム鋼板は1972年にアメリカで開発され、商用として生産されはじめたのは1982年と、35年以上の歴史があります。
1990年代から板金で用いる素材はトタンからガルバリウム鋼板へシフトしました。