1.現地調査

築14年のお宅です。

サイディングの外壁目地コーキングの隙間がある、屋根や外壁が汚れと苔が目立ってきたのでメンテナンスを検討しているとのご相談をいただきました。

建物診断にうかがいました。

まずは高所カメラを使って屋根の状態を見ていきます。

スレート屋根の全体的な色あせと苔が広がっているのが確認できます。

下屋根も同じように色あせと苔が広域に確認できます。
苔は苔自体に水分を含んでいるため、付着の放置期間が長くなるほど屋根材を脆くしてしまいます。

続いて外壁を点検していきます。
こちらも緑色になっている部分が苔の繁殖しているところです。

屋根と外壁は、防水機能が低下している状態ですので、早急にメンテナンスをおこなう時期に来ています。

お住まいは「傷めない」「傷めてもすぐに対処する」が建物寿命を長くする秘訣です。

ご相談のあったサイディングの外壁目地コーキングです。
コーキングの劣化で隙間と細かいひびも入っています。

全体的に柔軟性がなくなり、肉やせしているようです。

隙間があると雨水が侵入する可能性が高く、下地材をも傷めてしまうのでこちらも早めの補修が必要な状態です。

点検と調査の結果、屋根の塗装、外壁目地のコーキング打ち替え、外壁塗装、付帯部塗装、ベランダの防水工事を施工することになりました。

2.高圧洗浄

塗装前の高圧洗浄をおこないます。

建物全体を屋根から順番に汚れや苔を洗い流していきます。
業者専用の高圧洗浄は水圧が強く、洗い流して行くというよりは古い剥がれかかった塗膜と一緒に汚れや苔を剥がし取っていきます。

この段階でどれだけ下地をキレイにできたかで、このあとの塗装の仕上がりに大きく影響します。

汚れが残っている上から塗装をしても、塗料の機能が発揮できず耐用年数より前に不具合や剥がれが出てしまうことがあります。
塗装の密着は下地をできるだけ良いコンデションにすることです。

強い水圧は汚れをよく落としますが、傷んで脆くなっている部分には水圧の調整をおこないながら進めます。

水圧で割れたりひびが入ってしまうこともあります。
ひびのある場所では、水が大量に侵入してしまうこともあるので、簡単そうに見えますが知識と経験が必要な作業です。

全体の洗浄が終わりましたら、完全に乾くのを待ってから次の工程へと進んでいきます。

3.屋根塗装

屋根の塗装です。

まずは下塗りです。
下塗りはシーラーを塗布します。

薄く均一に塗ることで、傷んだ屋根材を整えながら強化していきます。
下塗りを省いてしまうと屋根材が過度に塗料を吸収し、仕上がりにムラが出てしまいます。

ハイグレードの塗料であっても、その耐用年数まで持たずに剥がれてしまうことも起こります。

下塗りを丁寧におこなうことで、上塗りは密着しやすくなり仕上がりもキレイに完成できるのです。

今回使用するのは、フッ素塗料です。
機能性が非常に高く、耐久性が極めて高いので劣化がしにくく長持ちする塗料です。

フッ素塗料の特徴は
・汚れがつきにくい
・かびや苔を寄せ付けない
・紫外線に強い
・塗り立ての光沢が長く続く

一度の工費が高いフッ素塗料ですが、耐用年数が非常に長いので塗り替えの回数が減らせます。
東京スカイツリーなどの大型建造物でも取り入れていることが多いのは、長いスパンで考えると
コストの削減につながるというメリットがあるからです。

縁切りをおこなっていきます。

縁切りは、塗料が屋根の隙間を塞いでしまうので、工具を使って剥がしていく作業です。

屋根の隙間を塞いでしまうと、屋根の内部で結露が起きたときに水分の逃げ場がなくなってしまいます。
隙間を作っておくことで屋根の内部が傷まないようにしているのです。

縁切りをおこなわない業者もいますが、屋根を守り雨漏りの予防のためにはなくてはならない重要な工程です。

4.外壁目地コーキングの打ち替え

目地コーキングの打ち替えです。

隙間ができてしまっている古いコーキングをカッターなどで、取り除きます。

古いコーキングが残っている上から、新しいコーキングを注入してしまうと剥がれてしまうことがあります。
下地を傷めないよう、丁寧に除去していきます。

養生をおこない、プライマーを塗布していきます。
比較的早い段階で剥がれが起こるのは、プライマーの塗布が少ないことが原因ということもあります。

コーキングは日のあたる場所であるかの環境にもよりますが、5~10年が寿命です。
紫外線を受け続けることで、劣化が進み柔軟性がなくなっていきます。

傷みは徐々に進み
肉やせ、細かいひび、隙間ができる、裂ける、剥がれる、欠落の順に深刻になっていきます。

止水のための働きがなくなっていくので、早い段階での対処で雨の侵入を遮断することが大事です。

5.外壁塗装

外壁の塗装です。

まずはシーラーで下塗りです。
シーラーを塗布することで全体的に薄い塗膜を作り、傷んだ下地を強化するので上塗り塗料がしっかり密着できます。

下塗りの工程をいかに丁寧におこなうかで、上塗りの仕上がりに大きく影響します。

上塗りに使用していくのは、シリコン塗料です。

シリコン塗料が一般住宅に多く採用されているのは、耐用年数が8〜10年と長く価格も高くないので費用対効果が良いということに注目されているためです。

シリコン塗料に主な特徴は
・親水性があり汚れがつきにくい
・紫外線に強い
・かびや苔を寄せ付けない
・弱溶剤なので臭気が控えめ
・無鉛なので環境にやさしい
・光沢が長く続いて美観を保つ

完成です。

アクセントカラーがよく映えています。
全体的に明るくなりました。

6.付帯部塗装

付帯部塗装です。

まずは軒天の塗装です。
軒天は外壁より外側に出ている屋根の裏側部分です。

直接雨が当たる場所ではありませんが、湿気が溜まりやすく防水機能が低下してくるとかびが発生することもあります。
さらに劣化が進むと、剥がれや穴があき屋根裏に雨が吹き込んでしまうため雨漏りへとつながります。

建物の外側のことだからと油断してしまうことが多いのですが、屋根と深く関連している場所の防水は徹底しておくことが大事です。

鼻隠は雨樋を設置している場所で、屋根や雨樋に不具合があると雨が直接かかり塗装が剥がれて防水機能が低下します。
徐々に劣化が進み、反りや変形などが起こると隙間ができて雨が入り込んでしまいます。

雨樋で隠れる場所ですが、屋根や外壁の塗装の際は一緒に塗装をおこない防水を回復させておきたい場所です。

雨樋も塗装をおこなっていきます。

塩化ビニール製の雨樋は、日当たりの良い環境にあると紫外線で色あせが進み、柔軟性がなくなってきます。
劣化で固くなっていくと変形、歪み、ひび割れ、穴あきなどの不具合が起こります。

雨樋の劣化が激しい場合は、状況により部分交換、全交換をおこなうこともあります。

7.ベランダ防水工事

ベランダの防水工事です。

高圧洗浄で汚れを取り除き乾燥後、防水工事専用のプライマーを均一に塗布していきます。
下地を整え、上塗りがしっかり密着できるようにする接着剤のような役割です。

中塗りと上塗りに使用していくのは、短時間で強靭な塗膜を作るオートンウレアックスHGです。

トップコートの必要がなく、わずか1日の工期で完成する耐久性の高い防水塗料です。
耐用年数は一般のウレタン防水の約2倍の20年という長さです。

耐摩擦性で歩き回るベランダでも光沢が続きます。

撥水性にも優れているので、かびや苔を寄せ付けず雨の日が続いても安心して
お過ごしいただけます。

8.施工完了

これですべての施工が終わりました。

建物全体の防水機能がアップして、美観も明るくキレイになりました。

今回は、フッ素塗料による屋根塗装、シリコン塗料による外壁塗装、外壁目地コーキング、オートンウレアックスHGでのベランダ防水工事を施工しました。
総工費は、約130万円、施工期間は約2週間でした。