劣化状態の確認

現地調査を行ったところ、屋上の防水層が経年劣化によりひび割れや膨れを起こしており、そこから雨水が建物内部に侵入していました。

築年数が30年と長く、これまでに大きな防水メンテナンスがされていなかったこともあり、既存の防水層はほとんど機能していない状態でした。

防水工事といってもさまざまな方法がありますが、今回は「絶縁工法」を採用しました。

絶縁工法とは、既存の防水層と新しく施工する防水層の間に“絶縁シート”を挟むことで、下地からの影響（湿気や熱、膨れなど）を遮断する工法です。これにより、防水層が長持ちし、今後のメンテナンスも行いやすくなるというメリットがあります。

防水工事開始

まず下地の清掃、コンクリートひび割れなどを補修した後、部分的にシートを密着させる所にボンドを塗布していきます。この「ロンタックセメント」とは、防水工事に使用される接着剤（ボンド）の一種で、特に塩ビシート防水工法において、シートと下地を接着するための接着剤として使われます。

そして絶縁シートを敷設していきます。今回使用した「ラジアルシートL600」は 絶縁緩衝シート の役割を持っており、主に以下のような用途で使われます

• 機械的固定工法 や 断熱防水工法 の仕様で、防水ルーフィング（塩ビシート防水ルーフィング）と下地の間に挿入して、下地の動きや熱膨張収縮、湿気や下地からの影響を緩和するための緩衝・絶縁層として使われる。

• 特に「機械的固定式」の仕様（固定ビスやディスクでシートを下地に固定するタイプ）で、直接ルーフィング材を固定する前に、このラジアルシートを敷設することで、防水シートの張力・ストレスを低減する役割を果たす。

ディスク固定工法は、塩ビシート防水やTPOシート防水などで主に採用される「機械的固定工法」の一種で、接着剤を全面に使わずにディスク金具（固定ディスク）と誘導加熱装置を用いてシートを固定する方法です。設計ピッチ（例：300～500mm程度）に従ってディスクプレートを下地にアンカー固定していきます。これだけの広さになるとディスクの数も膨大になります。

ディスク位置をマークしつつ防水シートを張り広げていきます。シート端部は（40～50mm）重ねていきます。

シート敷設後、誘導加熱装置を使ってディスクとシートを融着、固定していきます。シート重なり部は溶剤を使って溶着していきます。

最後に絶縁工法には欠かせない「脱気筒」を取り付けます。これは防水シートの内部に水蒸気や湿気がこもらないように換気をして、膨れや剥がれを防いでくれます。脱気筒の設置場所は基本的に屋根勾配の一番高い所にします。なぜなら水蒸気は高い所へ逃げていく為です。陸屋根の場合ほぼ中央付近に設置するケースが多いです。

設置個所のシートをくり抜き脱気筒をアンカー固定します。そして周辺の防水補強を施して完了です。

工事を終えて

今回はイレギュラーな不具合もなく工事が進み、天候にも恵まれたので予定よりも早く完工することができました。これで一安心とオーナー様も胸を撫でおろしておられました。